当たり前すぎてすっかり忘れていたそのことを私に思い出させてくれたのは、1993年にシャープから発売された、液晶表示・タッチペン操作の小さなコンピュータ「ザウルス」です。
手書き文字認識の精度とスピードは、当時としては画期的なものでした。「Z80」という初期のパソコンのCPUと同等品を、文字認識のためだけ搭載していたそうです。(Wikiペディアによる)
2cm角ほどの認識エリアにタッチペンで線を描くと、候補文字が次々と上部のウインドウに表示されていきます。すべてを描き終わらなくとも、意図していた文字が表示されたなら、それをタッチすれば確定される……。そういう操作体系でした。
しかし私には、どれだけ描いても描いても認識されない文字がありました。ひらがなの「せ」です。
他の文字はあれほど精度良く認識してくれるのに、画数も少なく形もシンプルなひらがなをわかってくれないなんて、いったいどういうことかとだいぶ悩みました。そしてひょっとしたら「自分の書き順が問題なのでは?」との疑念が生まれました。
私は「七」を描いてからタテ画を入れていましたが、考えてみれば「せ」は「世」の変体ですから、ヨコ画とタテ画を先に入れるのが正解なわけです。
それに気づき、はじめてザウルスで「せ」を書くことができて、えらく気持ちがスッキリしたのを覚えています。
おそらく、より速く候補文字を絞り込むため、書き順も文字判定の基準に加えていたということなんでしょうね。今これを書いているパソコンの手書き文字パレット(ATOKやMS-IMEなど日本語変換ソフトに用意されている)では、どんな書き順でも「せ」を認識してくれましたから。
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電子手帳の発展型として登場した「ザウルス」は、PDAと呼ばれる小型携行端末のはしりだったと思います。もちろん当時まだそういう言葉は定着していませんでした。
そしてその最初のモデルPI-3000は、私が初めて本格的に使ったタッチペン操作のデバイスでした。かなりヘビーに使いこみ、ハウツー本に使用実例のいくつかの原稿を寄稿したほどです。
ザウルスを使ってみての発見やエピソードを、もうすこし書いてみます。ちなみに「タッチペン」は正しくは「スタイラス」というんですね。石版に書く硬い筆のことだそうです。
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