2010年3月19日金曜日

ジャック・ニコルソンもお手上げ(その2)

「手書きメモ」の一番の用途は何だったかというと、これです。


「おおっ!」とか何とか言いながら、ザウルスに楽しげにサインしてくれたのは、シルベスター・スタローン。映画のプロモーションで来日し、帝国ホテルのスイートルームでの約30分の短い取材セッションの最後にサインをもらいました。そしてこれ。

分かりますよね、漫画家の小林よしのり氏。事務所を訪ね、取材を終えてから持ち出したところ、「おもしろいぞ、これは!」とつぶやきながら、太ペン細ペン、黒とグレーを使い分けながら描いてくれました。さすがでした。さらにこれ。
パソコン通信の偉大なる先達、すがやみつるさんのものです。すがやさんに直接描いていただいたものではなく、ザウルスどうしの赤外線通信で人づてにいただいたものです。たぶん師匠からだったかな。すがやさん、ありがとうございました。


また、やはり映画のプロモーション(たしか『ワイアット・アープ』)で来日したケビン・コスナーのサインです。ホテル西洋銀座で円卓にマスコミ各社を集めての取材セッション後にもらったものです。たくさんの方に赤外線通信でお配りしましたが、それが何人かの手を経て、当時ネットアイドルと呼ばれていた千葉麗子さん(チェリーベイブ)にも渡っていたことを、後日確認できました。
その日その場所でもらったという唯一性が、有名人のサインが価値の根源です(たぶん)。だって本人さえ生きていれば、サインはいくらでも生産できるわけですし。

ここに紹介した“サイン”は、デジタルな形とはいえ、ある特定の状況下で、書いたり描いたりしていただいたものです。私が自分でもらったものには6桁数字で日付を入れてありますので、取材時の状況証拠などから、もらったこれらが「ホンモノ」であることを証明することができます。では赤外線通信で人にあげちゃったりしたら、それは「ニセモノ」なの? でも「ホンモノ」と「ニセモノ」は1ビットたりとも違いはないわけで、じゃあホンモノとニセモノの境界はどこに? データそのものでなければ、そのデータを記録したハードウエアの唯一性が、サインの唯一性を意味しているのか? なら、一度データを消去して、再度インポートしたらどうなるの? なんてことを当時考えたりもしました。

もちろん、悩んでもあまり結論の出る話ではありませんし、結論が出たからどうだというものでもありません。どうせなら、殺害した友人になりすますためサインを練習するシーンが有名な、映画『太陽がいっぱい』で主人公を演じた、あのアラン・ドロンからもらっておけばよかったか……。
ともあれ。仕事で取材に行って、編集者や宣伝部の人やカメラマンのいる前でサインをもらうのは、実はとても恥ずかしいこと。が、当時めずらしかったザウルスは話のタネにもなり、みなさん喜んでサインしてくれて、こんなコレクションができあがっていきました。(後日あらためて紹介したいと思います。ノーベル賞作家などもありますよ。)

が、失敗もなかったわけではありません。それが表題の「ジャック・ニコルソン」でした。そして私はそこで、タッチペンデバイスの大きな弱点と、隠された意図を知ることになるのです。

(その3)につづく