2010年4月10日土曜日

ジャック・ニコルソンもお手上げ(その4)


 タッチペンをテーブルの上に投げ、去って行ったジャック・ニコルソン。はからずも彼は「タッチペンデバイスの隠された意図」を教えてくれました。

 彼がサインしようとするザウルスの画面、横から見ていたら、黒い描線がピュピュッと、描き手の意図しない形に直線的に走っていたように見えました。

 この現象、後で分かったのですが「何かが画面の2点以上に接触している場合」に起こるものでした。ザウルスの液晶画面のタッチセンサーは、同時に2点を指示されるとどちらがユーザーの意図したポイントなのか判別できなくなってしまいます。あっちかな、こっちかなという迷いが描線を瞬間移動させてしまうのです。

「後で分かった」というのは、トラックパッドを備えたパソコン(PowerBook 2400C)を操作したときに、2本指で触ってポインタの瞬間移動を体験したからです。ザウルスもトラックパッドも、あるいは銀行のATMなども、タッチセンサーは複数ポイントの同時検知ができなかった……。

 しかし、だからこそ「ペン」の意味があったわけです。タッチセンスとペン(スタイラス)をセットにしてユーザーに提供したのは、もちろん細かいポインティングをしやすく、という意図もあったでしょう。

 それと同時に、同時に1点しかセンスできないハードウェアの制約を、ユーザーから覆い隠す狙いもあったのではないか……。「そうだ! ペンを使わせれば、タッチセンスすべき箇所を1カ所に限定できる。2本以上のペンを持って同時に使っている人はいない……」

 デザイナーはそう考えたのかもしれません。

 もし2本使っている人がいたとしても、それはペンではなくお箸でしょうから。