2014年4月21日月曜日

薄墨で描いたCD

富士山をめぐる旅に行って来たSさん。旅行仲間から写真をCD(CD-R)で受け取りました。
ワクワクして開こうとすると、読み取れません。

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Q.CDの写真を開くのはどうしたらいいですか?
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と知恵袋で聞いてみました。

超初歩的な質問に、親切な人が回答してくれました。
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1)CDドライブにディスクを入れ
2)エクスプローラーで表示されたらダブルクリック
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言われたとおりにやってみましたがうまく行きません。
やるべきことはこの二つだけなので間違いようはないのです。

ぱそこんクラブにそのCDとパソコンを持参されたのでやってみたところ、
表示されたのは「書き込み準備が出来ました」というフォルダだけ。
それも色の薄いアイコンです。ダブルクリックして開いても、中には何も
入っていません。

――どうもおかしい。CD-Rを作成するときに残った途中の段階のデータを
間違って読み取っているようだ。なぜだろう?

CDに問題があるのか、パソコンに問題があるのか。
そのCDを、別のパソコン(比較的新しい)に入れてみたところ、ちゃんと読み
出すことができました。

パソコンでデータの入ったCDを作成することを、昔は「CDを焼く」と言っていました。
レーザー光の強度を上げ、盤面に小さな焦げ目をつけて、モールス信号のように
情報を記録していくからです。

じっくり時間をかけて「焼け」ば、濃い焦げ目をつけることができますが、急いで「焼く」と、
焦げ目が薄くなってしまい、新しいCDドライブでは読み出せても、古いCDドライブでは読
めない(焦げ目かそうでないか判別がつかない)という事態が生じてしまします。

おそらく今回のケースもこれだったのでしょう。
CD作成のときは、だいたいがドライブの最高速度で動作するように設定されています。
多数の人に配布するCDを作るとき、時間に余裕があるのなら書き込みのスピードを落として
「じっくり焼く」ようにするのが親切な方法です。





2014年3月18日火曜日

みかんゼリーチョコはどこから?

お菓子を人にあげるのが好きなのは大阪のおばちゃんだけではありません。

私も甘いものが好きなのでついついもらってしまうのですが(少し反省)、先日Tさんから袋ごといただいたチョコ、持ち帰ったら、20個ほど小袋に入っていたのを長男がほとんどすべて食べてしまいました。

あげくに、「あれ、どこで買って来たの~?」とのたまいます。

売っているのを見たことがなかったので、例によってグーグルさんに聞いてみました。

みかんゼリーチョコ

と入力したら、

みかんゼリーチョコ 平塚製菓 

と自動的にメーカー名を表示してくれました、さすがです。
検索ボタンを押す必要すらありません。ユーザーの入力を先読み(先回り)して表示する「Google インスタント検索」という機能です。

検索結果の中には、

このみかんゼリーチョコレートは、本当に美味しい。絶妙。


という大ファンの方もおられます。わざわざ写真を撮って投稿したくなるほど美味しいんですね。私は1個しか食べられませんでしたが。

で、「どこで売っているの?」という質問に戻りますが、Amazonでも楽天でも扱っていないようなので、ネットでのメーカー直販に期待をかけ、平塚製菓のホームページを訪ねてみました。しかし。

『工場直売セール』終了のお知らせ


と、寂しいご案内が..。

いっぽうでホームページには工場建設や採用情報、社員を海外研修に送ったりという情報も出ていますので、ビジネスそのものは順調な様子。

業態としてOEMを主とする、つまりどこか別の会社の包み紙がかぶさるお菓子の中身を供給する、黒子役の会社のようです。

Q&Aのコーナーには「指定のレシピで生産する以外に、具体的に内容が決まっていないお客様には弊社から商品を提案させていただきます」とまで出ています。

もしも将来、お宅の庭に隕石が落ちてきて、それを展示する展示館をつくり、見に来た人に買ってもらうおみやげも作りたいとなったら、相談してみるのもいいでしょう。

そうですね、「隕石チョコ」と名付けるなら、クラッシュピーナッツをまぶしたりするといいかもしれません。小惑星みたいで。

お菓子ビジネス未経験でもこの会社に頼めば頼めば何とかなりそうです。



しかし結局「みかんゼリーチョコはどこで売っているのか?」は解明できず。Tさんに今度会ったら聞いてみることにしましょう。

2010年4月10日土曜日

ジャック・ニコルソンもお手上げ(その4)


 タッチペンをテーブルの上に投げ、去って行ったジャック・ニコルソン。はからずも彼は「タッチペンデバイスの隠された意図」を教えてくれました。

 彼がサインしようとするザウルスの画面、横から見ていたら、黒い描線がピュピュッと、描き手の意図しない形に直線的に走っていたように見えました。

 この現象、後で分かったのですが「何かが画面の2点以上に接触している場合」に起こるものでした。ザウルスの液晶画面のタッチセンサーは、同時に2点を指示されるとどちらがユーザーの意図したポイントなのか判別できなくなってしまいます。あっちかな、こっちかなという迷いが描線を瞬間移動させてしまうのです。

「後で分かった」というのは、トラックパッドを備えたパソコン(PowerBook 2400C)を操作したときに、2本指で触ってポインタの瞬間移動を体験したからです。ザウルスもトラックパッドも、あるいは銀行のATMなども、タッチセンサーは複数ポイントの同時検知ができなかった……。

 しかし、だからこそ「ペン」の意味があったわけです。タッチセンスとペン(スタイラス)をセットにしてユーザーに提供したのは、もちろん細かいポインティングをしやすく、という意図もあったでしょう。

 それと同時に、同時に1点しかセンスできないハードウェアの制約を、ユーザーから覆い隠す狙いもあったのではないか……。「そうだ! ペンを使わせれば、タッチセンスすべき箇所を1カ所に限定できる。2本以上のペンを持って同時に使っている人はいない……」

 デザイナーはそう考えたのかもしれません。

 もし2本使っている人がいたとしても、それはペンではなくお箸でしょうから。

2010年3月24日水曜日

ジャック・ニコルソンもお手上げ(その3)

さて、ようやく3話目から本題に入ります。

稀代の名優、ジャック・ニコルソン主演で1994年に公開された『ウルフ』は、題名どおりのオオカミ男映画でした。

そのプロモーションの一環として、映画ライターをハリウッドに招き、ニコルソンをはじめ出演者や監督を囲む取材セッションが企画されました。場所はビバリーヒルズのフォー・シーズンズホテル。費用はぜんぶ映画配給会社持ちという豪勢な旅に、なぜかベテランの映画ライターに混じって私も参加することになりました。

太平洋を飛び越えて着いたロサンゼルスの季節はたしか初夏。『SPEED』の現地から封切り間もない頃だったと思います。カラリとした風が吹き抜ける明るいホテルの一室で、中央の円卓を何人かの記者が囲み、一つだけ席を空けて待ちます。

するとそこに次々と出演者やプロデューサーや監督がやってきて、いくつかの質問に答え、笑顔で握手して、手を振り去っていく。と、また次の取材対象者がやってくる……。

そういう部屋がホテル内に他にもいくつか設けられ、地元メディアの記者やライターたちも同じスタイルでインタビューをしていたのだと思います。実に効率的な取材セッションですね。

スタローンで味をしめた私は、当然ながらニコルソンからもザウルスにサインをもらおうという考えていました。何を訊いたか今となっては覚えていませんが、質問に機嫌良く答え終え、さて席を立とうかという瞬間を狙って、ペンとザウルス(もちろん「手書きメモ」の初期画面にセットした状態で)を差し出しました。

ニコルソンは笑顔を崩さずそれを受け取り、意図を理解し、ペンでサラサラッと描こうとしましたが、どうも思うように描けません。

2、3度チャレンジしても、やはりダメ。首を横に振り、ペンをテーブルの上に投げやり、両手を開いて「お手上げ」のポーズ。

「悪いね、もう時間だよ」とでも言いたげに、部屋を去っていってしまいました。時間にして20秒ほどの出来事だったと思います。


なぜ、うまく描けなかったのでしょう。横から見ていた限りでは、黒い描線がピュッと意図しない形で直線的に伸びてしまったような感じでした。ううむ、ザンネン。その時はそれでおしまいだったのですが、このブログにそのときの様子を書こうとあれこれ考えているうち、タッチペンデバイスの隠された意図に思い至りました。

(その4)に続く

2010年3月19日金曜日

ジャック・ニコルソンもお手上げ(その2)

「手書きメモ」の一番の用途は何だったかというと、これです。


「おおっ!」とか何とか言いながら、ザウルスに楽しげにサインしてくれたのは、シルベスター・スタローン。映画のプロモーションで来日し、帝国ホテルのスイートルームでの約30分の短い取材セッションの最後にサインをもらいました。そしてこれ。

分かりますよね、漫画家の小林よしのり氏。事務所を訪ね、取材を終えてから持ち出したところ、「おもしろいぞ、これは!」とつぶやきながら、太ペン細ペン、黒とグレーを使い分けながら描いてくれました。さすがでした。さらにこれ。
パソコン通信の偉大なる先達、すがやみつるさんのものです。すがやさんに直接描いていただいたものではなく、ザウルスどうしの赤外線通信で人づてにいただいたものです。たぶん師匠からだったかな。すがやさん、ありがとうございました。


また、やはり映画のプロモーション(たしか『ワイアット・アープ』)で来日したケビン・コスナーのサインです。ホテル西洋銀座で円卓にマスコミ各社を集めての取材セッション後にもらったものです。たくさんの方に赤外線通信でお配りしましたが、それが何人かの手を経て、当時ネットアイドルと呼ばれていた千葉麗子さん(チェリーベイブ)にも渡っていたことを、後日確認できました。
その日その場所でもらったという唯一性が、有名人のサインが価値の根源です(たぶん)。だって本人さえ生きていれば、サインはいくらでも生産できるわけですし。

ここに紹介した“サイン”は、デジタルな形とはいえ、ある特定の状況下で、書いたり描いたりしていただいたものです。私が自分でもらったものには6桁数字で日付を入れてありますので、取材時の状況証拠などから、もらったこれらが「ホンモノ」であることを証明することができます。では赤外線通信で人にあげちゃったりしたら、それは「ニセモノ」なの? でも「ホンモノ」と「ニセモノ」は1ビットたりとも違いはないわけで、じゃあホンモノとニセモノの境界はどこに? データそのものでなければ、そのデータを記録したハードウエアの唯一性が、サインの唯一性を意味しているのか? なら、一度データを消去して、再度インポートしたらどうなるの? なんてことを当時考えたりもしました。

もちろん、悩んでもあまり結論の出る話ではありませんし、結論が出たからどうだというものでもありません。どうせなら、殺害した友人になりすますためサインを練習するシーンが有名な、映画『太陽がいっぱい』で主人公を演じた、あのアラン・ドロンからもらっておけばよかったか……。
ともあれ。仕事で取材に行って、編集者や宣伝部の人やカメラマンのいる前でサインをもらうのは、実はとても恥ずかしいこと。が、当時めずらしかったザウルスは話のタネにもなり、みなさん喜んでサインしてくれて、こんなコレクションができあがっていきました。(後日あらためて紹介したいと思います。ノーベル賞作家などもありますよ。)

が、失敗もなかったわけではありません。それが表題の「ジャック・ニコルソン」でした。そして私はそこで、タッチペンデバイスの大きな弱点と、隠された意図を知ることになるのです。

(その3)につづく

2010年3月17日水曜日

ジャック・ニコルソンもお手上げ(その1)

個人的にかなり使い込んだつもりのタッチペンデバイス、ザウルス(PI-3000)の、どの機能をもっとも使っていたかというと、これはもう「手書きメモ」に尽きますね。

もちろん電話帳やスケジューラー、アクションリストや辞書などザウルスが売りものにしていた機能も使ってはいるわけですが、「手書きメモ」はそれらすべてを凌駕していました。ペンで自在に絵が描けるこの種の機能を備えた携帯機器は、当時ザウルスしかなかったように思います。どれほど使い込んでいたかというと、ザウルスのハウツー本にわざわざ記事を寄せたほどです。


  • 手近にある紙の切れ端に記入するように、ありとあらゆる情報をここに記す。電話しながらのメモもこれで取る。電話帳のデータを参照して電話をかけ、つながったら手書きメモに切り替えて待つという具合だ。これでメモ散逸の心配がなくなった。
  • 画面が小さく記入可能量が少ないのではといぶかる方があるかもしれないが、取材する仕事をしていていちばん重要なのは、情報を持っている人にアクセスするための手段、つまり電話番号と人名の2つだけ。したがってあの小さい表示面積でも充分なのだ。(MK)

『ザウルスで仕事革命』、行本明説・谷川昌司著、TBSブリタニカ、1994

現在のようなウェブサイトや検索エンジンなどなく、目的の情報にたどり着くためには、電話番号と人名→電話番号と人名→電話番号と人名→…というチェーンをひたすらたどるしかなかった時代のことです。


  • なおパソコンでは考えられないことだが、ザウルスは「タイトル未設定」という同じ名前で保存されたデータがいくつあっても受け入れてくれる。
  • パソコンやワープロだと「同じ名前のファイルがあります。上書きしますか?」などと聞き返してくるところを、シレッとした顔で呑み込んでくれるのが素晴らしい。これがあったからメモ用紙の替わりに使えているといっても過言ではない。(MK



この「手書きメモ」の機能は対面でのコミュニケーションを円滑にする役割まで果たしてくれました。何を言っているのかというと、人と会ったときに話題のとっかかりや話のタネにできちゃったということです。そしてどういうふうに使っていたかというと……。

(その2)につづく

2010年2月27日土曜日

「ひらがな」の書き順

当たり前ですが、ひらがなにも「正しい書き順」があります。

当たり前すぎてすっかり忘れていたそのことを私に思い出させてくれたのは、1993年にシャープから発売された、液晶表示・タッチペン操作の小さなコンピュータ「ザウルス」です。

手書き文字認識の精度とスピードは、当時としては画期的なものでした。「Z80」という初期のパソコンのCPUと同等品を、文字認識のためだけ搭載していたそうです。(Wikiペディアによる)

2cm角ほどの認識エリアにタッチペンで線を描くと、候補文字が次々と上部のウインドウに表示されていきます。すべてを描き終わらなくとも、意図していた文字が表示されたなら、それをタッチすれば確定される……。そういう操作体系でした。

しかし私には、どれだけ描いても描いても認識されない文字がありました。ひらがなの「せ」です。

他の文字はあれほど精度良く認識してくれるのに、画数も少なく形もシンプルなひらがなをわかってくれないなんて、いったいどういうことかとだいぶ悩みました。そしてひょっとしたら「自分の書き順が問題なのでは?」との疑念が生まれました。

私は「七」を描いてからタテ画を入れていましたが、考えてみれば「せ」は「世」の変体ですから、ヨコ画とタテ画を先に入れるのが正解なわけです。

それに気づき、はじめてザウルスで「せ」を書くことができて、えらく気持ちがスッキリしたのを覚えています。

おそらく、より速く候補文字を絞り込むため、書き順も文字判定の基準に加えていたということなんでしょうね。今これを書いているパソコンの手書き文字パレット(ATOKやMS-IMEなど日本語変換ソフトに用意されている)では、どんな書き順でも「せ」を認識してくれましたから。


電子手帳の発展型として登場した「ザウルス」は、PDAと呼ばれる小型携行端末のはしりだったと思います。もちろん当時まだそういう言葉は定着していませんでした。

そしてその最初のモデルPI-3000は、私が初めて本格的に使ったタッチペン操作のデバイスでした。かなりヘビーに使いこみ、ハウツー本に使用実例のいくつかの原稿を寄稿したほどです。

ザウルスを使ってみての発見やエピソードを、もうすこし書いてみます。ちなみに「タッチペン」は正しくは「スタイラス」というんですね。石版に書く硬い筆のことだそうです。